食品を安全に保存するためには、冷蔵庫や冷凍庫へ入れるだけでなく、適切な温度を保つことが重要です。
冷蔵庫の温度が高かったり、調理した料理を室温に長時間置いたりすると、食品に付着した細菌が増え、食中毒の原因になることがあります。
一方で、冷蔵や冷凍をすれば食品が完全に安全になるわけではありません。低温でも増殖できる細菌があり、冷凍しても死滅しない細菌やウイルスもあります。
この記事では、食中毒を防ぐために知っておきたい冷蔵庫・冷凍庫の温度、食品を常温に放置しないための工夫、冷蔵庫内の保存位置、調理済み食品の冷却と再加熱のポイントを解説します。
- 冷蔵庫と冷凍庫の温度管理の目安
- 食中毒菌が増えやすい温度帯
- 買い物から冷蔵庫へ入れるまでの注意点
- 冷蔵庫内で交差汚染を防ぐ保存方法
- 作った料理を素早く冷ます方法
- 保存した料理を安全に再加熱するポイント
食中毒予防の基本は「つけない・増やさない・やっつける」
家庭での食中毒予防では、細菌を食品に「つけない」、食品に付着した細菌を「増やさない」、加熱によって「やっつける」という3つの原則が基本です。
つけない
調理前や食事前には手を洗い、生肉や魚に使用した包丁・まな板・トングを、そのまま野菜や調理済み食品に使用しないようにします。
冷蔵庫内でも、生肉や魚から出た汁が他の食品へ付着しないよう、袋や密閉できる容器へ入れて保存することが大切です。
増やさない
肉、魚、乳製品、総菜、作り置き料理など、低温保存が必要な食品は購入後や調理後に長時間放置せず、早めに冷蔵庫または冷凍庫へ入れます。
やっつける
多くの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。加熱するときは食品の表面だけでなく、中心部まで十分に火を通すことが重要です。
厚生労働省や消費者庁では、多くの食品について中心部を75℃で1分以上加熱することを食中毒予防の目安として案内しています。食品の種類や調理方法によって必要な条件が異なる場合は、個別の表示や公的機関の案内を確認してください。
冷蔵庫と冷凍庫の温度管理の目安
厚生労働省が示す家庭での食中毒予防では、冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下に保つことが温度管理の目安とされています。
| 保存場所 | 温度管理の目安 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫 | 10℃以下 | 詰め込みすぎず、冷気が循環できる状態にする |
| 冷凍庫 | -15℃以下 | 扉の開閉を短くし、温度上昇を抑える |
冷蔵庫の機種や設定、収納場所によって庫内温度は異なります。温度設定の表示だけで判断せず、必要に応じて冷蔵庫用温度計を使用すると、実際の温度を確認しやすくなります。

食中毒菌は20~50℃で増えやすい
厚生労働省は、食中毒菌が20~50℃の温度帯でよく増えると注意を呼びかけています。
そのため、調理済みの料理を室温に長時間置くことや、大きな鍋に入れたままゆっくり冷ますことは避ける必要があります。料理の中心部が温かい状態で長く保たれると、細菌が増殖しやすくなる可能性があります。
ただし、細菌の種類によって増殖条件は異なります。「20℃未満なら必ず安全」「50℃を超えればすぐ安全」という意味ではありません。時間と温度の両方を意識することが大切です。
買い物から帰宅するまでの温度管理
冷蔵・冷凍食品の温度管理は、冷蔵庫へ入れてから始まるものではありません。買い物中や帰宅するまでの時間も重要です。
冷蔵・冷凍食品は最後に購入する
常温で保存できる食品を先に選び、肉、魚、乳製品、総菜、冷凍食品などは買い物の最後に購入すると、低温で管理できない時間を短くできます。
肉や魚は個別の袋に入れる
肉や魚のパックから汁が漏れると、他の食品へ細菌が付着する可能性があります。ポリ袋などに個別に入れ、野菜やそのまま食べる食品と分けて持ち帰ります。
帰宅したらすぐに収納する
冷蔵・冷凍が必要な食品は、帰宅後すぐに冷蔵庫や冷凍庫へ入れます。気温が高い時期や移動時間が長い場合は、保冷バッグや保冷剤を活用しましょう。
要冷蔵・要冷凍の食品を長時間常温に放置した場合、見た目やにおいだけで安全性を判断することはできません。保存状態に不安がある食品は、無理に食べないようにしましょう。
冷蔵庫へ食品を詰め込みすぎない
冷蔵庫へ食品を詰め込みすぎると、冷気の流れが妨げられ、庫内を均一に冷やしにくくなります。
食品同士の間に適度な空間をつくり、冷気が循環できるようにしましょう。庫内を整理すると、食品の期限や残量を確認しやすくなり、食品ロスの削減にもつながります。
また、扉を長時間開けたままにすると庫内温度が上がります。使用する食品を決めてから扉を開け、必要なものを素早く取り出すことが大切です。
生肉・魚は冷蔵庫の下段へ入れる
生肉や魚は、汁が他の食品へ落ちるのを防ぐため、袋やふた付き容器に入れたうえで冷蔵庫の下段に保存します。
加熱せずに食べる野菜、果物、調理済みのおかずなどは、生肉や魚と接触しない場所に置きましょう。
容器の外側に肉や魚の汁が付いた場合は、そのまま冷蔵庫へ入れず、清潔に拭き取ってから収納します。
冷蔵庫に入れても細菌が死滅するわけではない
冷蔵は細菌の増殖を遅らせる方法であり、細菌をすべて死滅させる方法ではありません。
リステリアのように低温でも増殖できる細菌もあります。そのため、冷蔵庫に入れているから安全だと過信せず、食品に表示された保存方法と期限を守り、開封後は早めに食べ切ることが大切です。
作り置き料理についても、冷蔵庫へ入れた時点から品質や安全性の変化が完全に止まるわけではありません。
作り置き料理の保存期間については、次の記事も参考にしてください。
冷凍しても細菌やウイルスがすべて死ぬわけではない
冷凍すると多くの微生物の増殖を抑えられますが、付着している細菌やウイルスがすべて死滅するわけではありません。
傷み始めた食品を冷凍しても、新鮮で安全な状態に戻すことはできません。冷凍する場合も、新鮮なうちに衛生的に下処理することが基本です。
解凍後は細菌が再び増えやすくなるため、冷蔵庫、冷たい流水、電子レンジなどを利用し、解凍後は早めに調理します。
食材別の冷凍方法や安全な解凍方法は、次の記事で詳しく解説しています。
調理した料理は浅い容器へ小分けする
カレー、シチュー、煮物、スープなどを大きな鍋に入れたまま保存すると、表面が冷えても中心部の温度が下がりにくいことがあります。
保存する料理は、清潔で底の浅い容器に一食分ずつ小分けし、できるだけ短時間で温度を下げます。容器の大きさに対して大量に詰め込みすぎないことも大切です。
室温で完全に冷めるまで長時間放置するのではなく、粗熱を効率よく取り、速やかに冷蔵または冷凍しましょう。
早く冷ますための工夫
- 底の浅い容器へ少量ずつ分ける
- 清潔な器具で時々混ぜ、熱を逃がす
- 鍋底を冷水や氷水に当てて冷却する
- 一回で食べる量に分ける
- 冷却中も長時間室温に放置しない
保存した料理は中心まで十分に再加熱する
冷蔵・冷凍した料理を食べるときは、全体を十分に再加熱します。
電子レンジは食品の形や量によって加熱むらが生じることがあります。途中で混ぜたり、容器の向きを変えたりして、中心部まで熱くなっていることを確認しましょう。
カレーやスープなどは鍋底からよく混ぜ、全体が十分に加熱されるようにします。
保存容器を使用するときの注意点
保存容器は、食品の量に合ったサイズを選び、使用前に清潔で十分乾いていることを確認します。
ふたやパッキンに汚れや水分が残っていると、衛生状態を保ちにくくなります。取り外せる部品は定期的に外して洗浄し、完全に乾かしてから取り付けましょう。
密閉容器や真空保存容器を使用しても、加熱殺菌や冷蔵・冷凍の代わりにはなりません。要冷蔵の食品は密閉後も冷蔵庫に入れ、適切な温度と期間で管理してください。
空気との接触を抑えることは乾燥や酸化の軽減に役立ちますが、食品に付着した微生物を取り除くものではありません。容器の機能だけに頼らず、清潔な取り扱いと低温管理を組み合わせましょう。
食中毒を防ぐための保存チェックリスト
- 食品に表示された保存方法を確認したか
- 冷蔵・冷凍食品を購入後すぐに収納したか
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下か
- 冷蔵庫へ食品を詰め込みすぎていないか
- 生肉や魚を袋や容器に入れて下段に置いたか
- 調理済み食品と生の食品を分けているか
- 作った料理を室温に長時間放置していないか
- 大鍋料理を浅い容器へ小分けしたか
- 食べる前に中心部まで十分に再加熱したか
- 保存状態に不安のある食品を無理に食べていないか
保存温度についてよくある疑問
冷蔵庫へ入れれば消費期限を過ぎても食べられますか?
消費期限は、表示された保存方法を守った未開封の状態で安全に食べられる期限です。冷蔵庫へ入れていても、消費期限を過ぎた食品は食べないようにしましょう。
開封後は、表示された期限に関係なく早めに使用する必要があります。
においや見た目に異常がなければ安全ですか?
食中毒の原因となる細菌やウイルスは、食品の見た目、味、においに明確な変化を起こさない場合があります。感覚だけで安全性を判断することはできません。
加熱すれば常温に長く置いた食品も食べられますか?
加熱によって多くの細菌は死滅しますが、細菌が作った毒素の中には加熱しても分解されにくいものがあります。長時間放置した食品を、再加熱だけで安全に戻せるとは限りません。
真空状態なら常温で保存できますか?
真空状態にしても、要冷蔵・要冷凍と表示された食品を常温保存できるようになるわけではありません。食品の表示に従い、必要な温度で保存してください。
まとめ
食中毒を防ぐためには、食品へ細菌をつけないことに加えて、細菌を増やさないための時間と温度の管理が重要です。
冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下を管理の目安とし、冷蔵庫へ食品を詰め込みすぎないようにしましょう。
生肉や魚は汁が漏れないように包んで下段へ保存し、調理済み食品や生で食べる野菜との接触を防ぎます。
作った料理は浅い容器へ小分けして素早く冷まし、食べるときは中心部まで十分に再加熱してください。
参考・関連サイト
食品の保存温度や家庭での食中毒予防について、さらに詳しく確認したい場合は、以下の公的機関の情報も参考にしてください。


